頭頸部がんと治療法
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あなたのがんについて
INDEX
1 頭頸部<とうけいぶ>とは
頭頸部とは顔面から首(鎖骨から上)までの範囲を指し、脳、眼球を除く部位をいいます。
頭頸部には呼吸や食事など人が生きるために必要な機能だけでなく、発声や味覚、聴覚など社会生活を送るために重要な機能をつかさどる器官が集まっています。
2 主な頭頸部がん
口腔<こうくう>がん
口腔は口の中を意味しますが、ここに生じるがんには、舌にできる舌<ぜつ>がん、舌と歯ぐきの間にできる口腔底<こうくうてい>がん、歯ぐきにできる歯肉<しにく>がん、頬の内側の粘膜にできる頬粘膜<きょうねんまく>がん、口の天井の固い部分にできる硬口蓋<こうこうがい>がんなどがあります。
咽頭<いんとう>がん
鼻の奥から食道までの、食べ物や空気の通り道の部分を咽頭といい、咽頭がんは上咽頭<じょういんとう>がん、中咽頭<ちゅういんとう>がん、下咽頭<かいんとう>がんの3つに分けられます。上咽頭がんはのどの上の部分、鼻の突き当たりにできるがんです。中咽頭がんは口を大きく開けたときに見える部分にできるがんです。下咽頭がんはのどぼとけの後ろあたり、食道や喉頭<こうとう>(次項参照)につながるところにできるがんです。
喉頭<こうとう>がん
咽頭と同じく喉頭ものどぼとけの後ろあたりにあり、喉頭蓋<こうとうがい>と声門(声帯)を含みます。喉頭蓋は食べ物を食道へ、空気を気道へ振り分ける働きがあり、声門(声帯)は発声に関わっています。声門より上を声門上部<せいもんじょうぶ>、下を声門下部<せいもんかぶ>といい、がんができる場所によって声門がん、声門上部がん、声門下部がんの3つに分けられます。
上顎洞<じょうがくどう>がん
鼻の内部の周辺、頬の骨の裏側には左右4つずつの副鼻腔と呼ばれる空洞があります(前頭洞<ぜんとうどう>、蝶形骨洞<ちょうけいこつどう>、篩骨洞<しこつどう>、上顎洞)。その中で一番大きな空洞が上顎洞です。上顎洞の粘膜から発生するがんを上顎洞がんと呼び、副鼻腔に生じるがんの中で最も多いがんになります。
唾液腺<だえきせん>がん
唾液を作る組織である唾液腺にできるがんが唾液腺がんです。唾液腺は大唾液腺と小唾液腺に分けられます。大唾液腺は3つあり(耳下腺<じかせん>、顎下腺<がっかせん>、舌下腺<ぜっかせん>)、それぞれで作られた唾液は管を通って口の中に分泌されます。小唾液腺は口の中やのどの粘膜にあって、口の中に唾液を直接分泌しています。唾液腺がんの多くは耳下腺がんと顎下腺がんです。
3 頭頸部がんの主な治療法
頭頸部がんの治療法には主に外科手術、放射線治療、薬物治療があります。治療法は患者さんの治療後の生活への影響を考慮しながら、がんの大きさや広がりの程度、がんの部位や組織の状態、年齢、これまでにかかった病気や合併症、臓器の機能などに基づき、患者さんごとに主に3つの治療法を組み合わせて行われます。
外科手術
外科手術は頭頸部がんで根治的治療(がんを治すことをめざして、原因そのものを取り除こうとする治療法)の柱になっている治療です。口腔がんや咽頭がん、喉頭がんでは、がんを切除することによって発声や食べ物を噛んだり飲み込んだりする機能に影響することもあります。早期の下咽頭がんや喉頭がんに対しては、皮膚を切らずに内視鏡を用いて口からがんを切除する経口的手術が行われることもあります。
放射線治療
がんを縮小させたり消失させたりするためにがんに放射線を当てて行う治療が放射線治療です。治療後に容貌が変化したり、発声や食べ物を噛んだり飲み込んだりする機能が低下したりすることが少ない点が外科手術とは異なります。がんの部位によっては放射線治療の効果が出て、治ることもあります。
外科手術だけでは治療が難しい場合に放射線治療が行われることがあります。また頭頸部がんでは、放射線治療に抗がん剤による治療(薬物治療、次項参照)を組み合わせる化学放射線療法が多く行われます。
薬物治療(化学療法/分子標的薬/がん免疫療法)
がんの薬物治療には主に化学療法、分子標的薬による治療、がん免疫療法があります。
化学療法は、がん細胞だけでなく正常な細胞にも作用する「殺細胞性抗がん剤」が使用されます。体の機能や臓器を保つために放射線治療に加えて治療効果を高めたり(化学放射線療法)、外科手術や放射線治療の前や後に投与したりするなど、補助的に行われます。外科手術ができない場合、転移などがある場合、外科手術や放射線治療を行った後に再発した場合などにも行われます。
分子標的薬はがん細胞だけを狙って攻撃する薬で、がん細胞の表面に多くあらわれるタンパク質に作用してがん細胞が増えるのを抑えます。がん免疫療法では、患者さん自身の免疫※によりがん細胞を攻撃する力を高める薬(免疫チェックポイント阻害薬)などが使用されます。
※体内の異物を攻撃したり排除したりする働き。